歯の治療回数と抜歯
歯の治療を受けた人はたくさんいると思います。でも、どの歯にどんな治療を受けているか全てを把握している人はなかなかいないかもしれません。さらに言うと、その治療を受けた歯は何回目の治療なのかまで把握している人はもっといないでしょう。
そこで、今回はよくある歯の治療(保険治療)と、何回歯を治療したら抜歯に至ってしまうのかを解説します。ん?治療するのに抜歯?と思ったあなた。鋭い!虫歯の治療は基本的に削ることを前提としています。つまり同じはに治療を繰り返すことは歯の寿命を縮めるということです。
※歯の治療方法は様々あります。今回はその中の一例を挙げております。現在治療が必要な方は、どんな治療方法の選択肢があるのか主治医または担当スタッフに聞いて下さい※
目次
抜歯への片道切符
冒頭でも触れましたが、虫歯の治療は歯を削ることを意味します。結論から言うと、歯は概ね5回程度治療を繰り返したら抜歯に至ります。そして、削った歯が削る前の状態の自分の歯に再生することはありません。歯の治療を繰り返すということは抜歯への片道切符を持ってしまったということです。
治療1回目~詰め物~
お口の中を見てみて、「あれ、歯の表面が黒くなってる気がする!」と思って歯医者を受診される人は多いです。歯の表面の自分の目で見えるところが黒く変色していたら気になりますよね。
また、「最近冷たいものがしみるようになった」と感じて歯医者を受診される人もいるでしょう。しみなかったものが染み出したら不安ですよね。
このようなケースの場合、小さな虫歯と診断されることがあります。小さな虫歯の場合、その虫歯の部分だけ削って白い詰め物(CR:コンポジットレジン)の治療を行うケースが多いです。これは、1回の来院で終わります。
治療2回目~部分的な銀歯~
虫歯を直した白い詰め物の縁に新たな虫歯ができてしまうことがあります。この場合、2つの可能性があります。
- 虫歯の部分が小さく、もう一度白い詰め物(CR)の治療で済む可能性
- 虫歯が内側で広がっており、型どりをして銀歯を作らなければならない場合
虫歯がある程度大きくなってしまうと、型どりをして部分的な銀歯(インレーといいます)を作らなければならなくなります。白い詰め物(CR)との違いは、虫歯を削った後に形を整えて(虫歯でない部分も削らなければならない!)型どりをすることです。その型を元に模型を作り、歯科技工士さんに銀歯の作成を依頼します。詳しくは別記事に今後掲載しますね。
従って、1日では治療は完了せず、しかも金属を入れなければならなくなります。インレーの治療をするのは、奥歯の歯と歯の間が虫歯で失われてしまったケースに多いです。
治療3回目~銀歯のかぶせ物~
白い詰め物(CR)もそうですが、部分的な銀歯(インレー)でも縁から虫歯になってしまうリスクがあります。あるいは、銀歯とは反対側に新たに虫歯ができてしまうこともあります。この場合も、以下の可能性が考えられます。
- もともとの銀歯と同じ形でやり治せる可能性
- 部分的な銀歯だが、金属が覆う範囲が増える可能性
- 歯を一周ぐるっと削って、全て覆う可能性
インレーの縁から虫歯になり、中で虫歯が広がってしまった時に一番被害が大きいと歯を一周ぐるっと削って銀歯のかぶせ物(クラウンと言います)にしなければなりません。インレーの時と同様に、虫歯ではない部分もやむを得ず削らなければなりませんし、型どりが必要です。こうなると自分の歯の部分は外からはほとんど見えなくなります。
上のイラストをご覧になって、そろそろ気づいた方もいらっしゃるかもしれません。大事なこと書きますのでゆっくりと読んでくださいね。
治療を重ねる度に自分の歯はどんどん小さくなっていきます
治療が終われば、見た目は歯の形をしています。でも、上のイラストの治療している歯の左の歯を見てください。見た目は同じような歯の形でも、銀歯の中にある自分の歯はこんなに小さくなってしまっています。
治療4回目
銀歯のかぶせ物(クラウン)が入ってしまうと、これまでの治療と同様、クラウンの縁からも虫歯になるリスクはあります。そして、もはや縁から虫歯になっていても自宅で鏡で見て発見することはかなり困難となります。クラウンの縁で虫歯になってしまった場合、次の可能性が考えられます。
- クラウンを外してみた結果、虫歯はそこまで進行しておらず同じ様にクラウンで治療できる可能性
- クラウンを外すと虫歯がかなり進行しており、歯の神経を抜く処置をしなければならない可能性
3回目の治療までは、歯の神経は保存できていました。しかし後者の場合、歯の神経を抜く(歯自体を抜くわけではありませんよ)必要が出てきてしまいました。歯の神経を抜く処置が必要な場合は、無症状のまま虫歯が進行したケースもあれば、痛み止めを飲んでも効かないようなズキズキとした痛みを感じるケースまで幅があります。
歯の神経を抜く処置はよく「根の治療」と表現されます。根の中が汚染されていなければ治療回数は比較的少ないです。しかし、根の治療が終わったら「コア」という歯の土台を作り、さらにかぶせ物の方どりが必要になるため、少なくとも3~5回は治療日数がかかります。
治療5回目~感染した根の治療~
根の治療を終えた歯は、再び銀歯のかぶせ物(クラウン)の治療をすることで歯の形を取り戻します。しかし、自分の歯はかなり小さくなってしまいました。治療した銀歯や土台など人工物は虫歯になることはありませんが、クラウンの縁はやはり虫歯になるリスクを抱えています。
神経を抜いた歯は、歯自体がしみたり痛みを感じることはありません。ですから、銀歯の下で静かに虫歯が進行するケースが多くあります。また、歯の根の中が感染を起こすと根の先に膿ができてしまうケースもあります。根の先に膿ができると、激烈な痛みを生じる場合もあります。このような場合、クラウンを外して判断しますが、次のような可能性が考えられます。
- 虫歯の進行はそこまでではなく、根の治療をせずにクラウンの治療で済む可能性
- 土台の縁まで虫歯が進行しており、再び根の治療が必要な場合
- 根の先に膿を持っており、根の治療が必要な場合(レントゲンで判断します)
根の治療をして、かぶせ物を入れればまた歯の形を復元できます。このケースは、根の中を良く消毒しなければならないため、神経を抜く処置よりも更に回数がかかります。治りがあまり良くない患者さんの中には、かぶせ物を入れるまでに少なくとも7~8回は治療日数がかかります。
汚染された根の中をきれいにするというのは、つまるとこ歯の表面を削っています。土台を立てる時も少なからず歯は削れます。この段階までくると残っている歯は健全な歯と比べるとかなり小さいです。根の治療は、歯によっては何度か繰り返す余力はありますが、治療を繰り返していると、いずれ寿命がやってきます。
抜歯
これまで治療を繰り返した結果、残っている歯はかなり小さくなってしまいました。そこへ更に虫歯になってしまうと、厳しい状況に追い打ちをかけます。限度を超えて歯茎の下まで虫歯に侵されてしまうと、もう歯の形として復元することはできなくなります。そうなると、骨の中に歯の根が残っていたとしても、歯を抜かなくてはならなくなります。
歯を抜いた後の治療はブリッジ、入れ歯、インプラントが考えられます。それらの治療方法についてはまた別の記事で紹介しますね。
まとめ
いかがでしたか?この5回の治療というのは、あくまで一例です。最初の治療だったとしても、物凄く大きな虫歯で、即抜歯となってしまうケースもあります。虫歯にならないのが一番ですが、もし虫歯になってしまった場合は、治療した後が大切です。治療で歯科医院に通う場合は、歯科衛生士さんに歯磨きの仕方を教えてもらえます。そして、定期的に健診に通って下さい。虫歯を予防して健康なお口を維持しましょう!